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メイドin西川口(ハレ系)ヘルス

長閑 ひより

長閑 ひより

28歳 T161 B83(D) W57 H85



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長閑 ひより
8月21日22時21分
by 長閑 ひより
君とのあいだに置いたもの 【第1話】小さな窓から見えた世界

─────当時、小学5年生だった私は、とあるアニメが大好きで、暇さえあればそのアニメの絵を描いていました。


ある日、絵の描き方や色の塗り方を調べるため、兄弟共有のパソコンが置いてある子供部屋を開けると、兄がパソコンを使っている最中でした。


「お兄ちゃん。使い終わったら貸してー」


「いいけど、でも、あと30分待って」


「うん。……って、また掲示板?」


兄が見ていた画面には、アニメに関するたくさんのスレッドが並んでいました。


「私が好きな○○○○のスレッドもあるの?」


「あるけど……そんなに伸びてない」


「えー……何でだろ。アニメ自体は凄く人気あるのに」


「さーな。書き込む奴があんまりいないんだろ」


「ふーん……」


不服そうに呟くと、私はソファに寝転がりながら兄がパソコンを使い終わるのを待ちました。


それから30分ほど経ち、兄がパソコンから離れたので、今度は私の番。


本来の目的は絵について調べることでしたが、興味本位で先ほど兄が見ていた掲示板を覗いてみることにしました。


好きなアニメのタイトルをクリックしてみると、一番最後の書き込みは2ヶ月も前。


そのまま過去の書き込みを読み進めていき、気付けば300レスほどを全部読んでいました。


ついでに、書き込みもしてみようかな……


そう思った特に理由はありません。


ただ、なんとなくでした。


先週放送された回の感想を書き、HNは、その時期が春だったので「サクラ」にしました。


初めて書き込んでから3日後、再び掲示板を覗いてみると、新たな書き込みがありました。


[ 俺もその回見ました。面白かったですよね。

久しぶりに書き込みあって嬉しいです。ここ、大分過疎ってたから(笑) ]


わー、ちゃんと返事来るんだ!


嬉しくなった私は、すぐに返信をしました。


[ ですよね!○○が○○で、まさかの展開でした(笑)

来週も楽しみです!また感想書きますね☆ ]


返事をくれたのは、「ウルフ」というHNの人でした。


1日、2日間隔のゆっくりとしたやり取りでしたが、ウルフさんは確実に私の書き込みに反応してくれました。


二人の書き込みをきっかけに、止まっていたスレッドには少しずつ人が戻ってきました。


話題はもちろん、そのアニメのこと。


それでも書き込みは続き、いつしか「おやすみ」「また今度」といった何気ないやり取りも増えていきました。


[ そろそろ寝るから落ちるね ]


[ 分かりましたー。 ]


[ 了解。また今度 ノシ ]


ノシ?


意味が分からず質問すると、


[ ノシっていうのは、バイバイって意味ですよ。

ほら、手を振ってるみたいに見えるでしょ? ]


確かに! 言われてみればそう見える(笑)


ネット用語については分からないことだらけでした。


パソコンを使うこと自体は、周りの同級生より慣れていたと思います。


タイピングゲームも小学1年生の頃からやっていたので、速さには少し自信がありました。


ただし、ホームポジションなんて知らず、打ち方は完全な自己流(笑)


そんな私に、画面の向こうにいる人たちは色々なことを優しく教えてくれました。



────サクラとして書き込みを始めてから半年。


だんだんと毎回書き込む人が固定化され、5人ほどのメンバーとのやり取りが続いていました。


「今日は寒いねー」


「暑いねー」


「ただいまー」


「おかえり」


「おやすみ〜」


いつものアニメの話をする前後にそんな書き込みも当たり前になって、私はその場所に不思議とアットホームな感覚を覚えるようになっていました。


そして、ちょうどその頃。


何がきっかけだったのかは覚えていませんが、私は友達数人にこの掲示板の話をしました。


すると友達も興味を持ち、参加してみたいと言い出しました。


そこで友達の家に集まり、掲示板の場所や書き込み方を教えることに。


「私、サクラって名前で書き込んでるよ」


「分かったー。じゃあ、うちは……ヒマワリにしよーっと」


「サクラに被せてきてるw」


「今日の夜7時くらいに書き込んどくから見てねー」


他の友達も、それぞれ花の名前に決めました。


夜になり、いつものように掲示板を開くと、既にいつものメンバーが書き込んでいます。


そこに私も加わりました。


[ こんばんは。夜ご飯食べてたら遅くなっちゃいました ]


[ サクラさんこんばんは。今日から○○○のエンディング変わりましたよね ]


[ あの○○達がちょこちょこ動いてるやつですよね!曲も可愛いけど映像も可愛くって好きです ]


すると――


[ サクラー!来たよーーー ]


あ! ひろみちゃんだ


[ 良かった。書き込めたんだね ]


[ うちもいるよー ]


今度は、ちひろちゃんだ


こうして、私の友達2人が新たに加わりました。


……ただ、ここで少し問題が起きました。


友達はアニメを見てはいるものの、そこまでコアなファンではありません。


このアニメについて語るというより、離れた場所にいる友達同士で話せることが嬉しかったようで、書き込みのほとんどが私たちにしか分からない雑談。


完全に内輪のチャット状態でした。


いわゆる「スレチ」です。


私自身、それが良くないことは何となく分かっていました。


でも、上手く伝えることが出来ませんでした。


そんな中、さらに別の問題が起こります。


途中から、アニメとは全く関係のないことを書き込む人が現れました。


俗に言う「荒らし」です。


「荒らしには反応しないのが一番」


以前、ウルフさんからそう教えてもらっていました。


でも、友達はそんなことを知りません。


当然のように反応してしまいました。


[ ムカつくんですけどマジで。ここから出てってくれません? ]


[ そーだそーだ。さっきまで楽しかったのに。あんたのせいで台無し! ]


[ まぁまぁ、ヒマワリも椿も落ち着いて。 ]


[ そもそも、お前がこいつら呼んだんだろ?なんとかしろよ。この○○○! ]


[ サクラになんて事言うの!?サイテー!!あっち行け!! ]


間に入ったら飛び火する。


そう思った私は、どうすることも出来ずにいました。


すると――


[ サクラさんの友達は頭の悪い人ばかりなんですね。

そんな友達を持つサクラさんを同情しますよ。 ]


「えっ……」


思わず声が漏れました。


半年以上やり取りを続けてきた、優しかったはずのウルフさん。


そのウルフさんから、こんな冷たい言葉が返ってきたのです。


どうして……ウルフさん、そんなこと書くの?


友達への批判は続き、騒ぎに気づいた人まで加わって、事態はどんどん悪化していきました。


[ 確かに、私の友達が関係ない事を書き始めてしまって、ここでの流れを乱してしまった事は申し訳なく思います。


だけど、私の大切な友達をそんな風に書くのはやめてください! ]


勢いで書き込んだ文章を送信すると、私は素早く掲示板を閉じ、パソコンの電源を切りました。


───あの日の私の最後の書き込みは、荒らしに対してでもありましたが、ウルフさんに対してでもありました。


どうしよう……。


私自身で、私が好きな場所をめちゃくちゃにしてしまった……。


友達にも、ウルフさん達にも、何て言ったら良いのか分かんないよ……


友達はきっと、やり取りする場所はあそこじゃなくても良くて、


いや、むしろ――


あの場所じゃダメだったんだと思います。


─────次の日。


少し憂鬱な気持ちで学校へ行った私ですが、教室に入るなり、ひろみちゃんとちひろちゃんが駆け寄ってきました。


「ひより、おはよう。昨日はホントごめんっ!」


「いやいや、謝らないでね。

むしろ私こそごめん。嫌な気持ちにさせちゃったよね。


で、もし良かったらなんだけど、昨日あれから色々考えて……。


私達だけで雑談できるような場所を作ったから、そこでやり取りしない?」


「え! 凄いね、それ。」


「お兄ちゃんに聞いたら、無料でチャット出来るところを教えてくれて。

そこなら人数制限とか鍵とか設定出来るし、良いかなって。」


「めっちゃ良いね! ありがと!

今日うちん家来るとき、また教えて!」


「うん、分かった!」


「でさ、ひよりってあの後掲示板見てた?」


「え?……ううん。

なんか、反応が怖くて見たくなくて、書き込みした後すぐ電源切っちゃった。」


「やっぱり。」


「?」


私がキョトンとしていると、2人は顔を見合わせました。


「うちは見てた。ちーちゃんもね。


ひよりが書き込んだ後、やっぱりバカにするような書き込みがあってさ。

ムカつくから、それに反応してたの。」


「そうなんだ……。」


「そしたらさ、またウルフって人が反応してきて。」


「そうそう。」


ウルフという名前を聞いた瞬間、不意に心臓がドクンと波打ちました。


また、酷い事書いたんだろうな……


私の表情が暗くなったことに気づいたのでしょう。


ひろみちゃんは慌てたように続けます。


「あ、ウルフって人は、うちらがムカつくような事は書いてないからね?


でも、何て言えば良いのかな……ひよりなら理解出来るんだと思うんだけど。」


「どういう事?」


「とりあえず帰ったら掲示板見てみてよ。」


「……うん、分かった。見てみる。」


放課後。


ひろみちゃんの家に遊びに行ったあと、私はすぐさま家路を急ぎました。


いつもより倍のスピードでご飯を食べ、子供部屋にあるパソコンの電源を入れます。


掲示板のサイトを開き、いつものスレッドを確認すると、レスはかなり伸びていました。


荒らしと友達のやり取りを飛ばし読みしていくと――


途中で、ウルフさんの書き込みを見つけました。


[ サクラさん! その書き込みは俺じゃないです! ]


[ 他の誰かが俺になりすまして書き込みしているだけです。 ]


[ なりすまし防止でトリを付けました。 ]


[ このトリが付いている書き込みが俺本人です! ]


私に向けて書いていると思われるウルフさんの書き込み。


しかし、それを覆い隠すように荒らしの書き込みが続いています。


しかも驚いたことに、私「サクラ」のなりすましまで出ていました。


それでもウルフさんは、なりすましには反応せず、本当の私を探しているようでした。


昨日のはウルフさんの書き込みじゃなかったの?


……トリって何の事??


付けたって、何を?


友達が「ひよりなら分かる」と言っていた意味は、これで何となく分かりました。


でも、ウルフさんの書き込みの意味は私にも分かりません。


悩んでいると、兄が鼻歌を歌いながら子供部屋に入ってきました。


「あ、お兄ちゃん!

あのさ、トリって何?」


「……トリ??


……ああ、トリップの略だろ?」


「トリップ?」


「HNの横に付けるやつ。どういうトリを付けたかは、付けた本人にしか分かんないようになってる。」


「どうやって付けるの?」


「HNの隣に#、その後何でも良いからアルファベットとか入力して書き込みしてみれば分かる。」


「ありがと!」


兄に教えてもらった通りに書き込むと、#は◆に変わり、その後のアルファベットも全然違う文字列になりました。


あ、そういえばトリの書き込みの辺りで、ウルフさんにもこういうの付いてたっけ。


[ ウルフさん、昨日は本当にごめんなさい!

私もHNにトリを付けました。 ]


ウルフさんもちょうどログイン中だったのでしょう。


返信はすぐに来ました。


[ サクラさんこんばんは!

俺は途中から抜けていたんですけど、その後スレ見たら大変な事になっていて驚きました。 ]


昨日の誤解は解け、いつも通りのやり取りに戻りました。


それでも荒らしは少なからず続いていました。


そんな荒れてしまったスレッド上でやり取りを続けて、4ヶ月半ほど経ったある日のこと。


[ ここで書き込みを続けていても、正直微妙な気がするんですよね。 ]


ウルフさんの唐突な書き込みに、タイピングの手が止まりました。


ん?……これはもしかして、


ウルフさんも書き込みをやめちゃうって事?


[ 確かに、そうかもしれませんね……。 ]


止める権限なんて私にはありません。


だって、事の発端は私だから。


すると、ウルフさんから続けて書き込みがありました。


[ だから、もしサクラさんが嫌でなければ、こっちでやり取りしませんか? ]


[ こっち? ]


[ 俺のHNにアドレスをリンクしておいたので、クリックしてもらえれば送れるはずです。 ]


ウルフさんのHNが緑から青色に変わっていました。


カーソルを合わせると、矢印が手のマークに変わります。


あ! これ……メールアドレスじゃん!


これでウルフさんと直接やり取り出来るって事?


嬉しくなったのも束の間――


私は、あることに気づきました。


私……メールアドレス持ってないじゃん!


……送る以前の問題でした。


また兄に頼み、メールアドレスの取得方法を教えてもらいます。


方法は至って単純で、ものの数分で取得出来ました。


出来立てのアドレスを使い、ウルフさんへ人生初のメールを送ります。


【 こちらはサクラのアドレスです。

そちらはウルフさんのアドレスでしょうか? 】


今思えば、何故かトランシーバーでやり取りをしているような文章でした


返信はすぐに届きます。


【 こちらでは初めまして、サクラさん。

はい、ウルフのアドレスで間違いないですよ(笑) 】


【 良かったです!

こっちでも宜しくお願いしますm(_ _)m


あ、ウルフさんのアドレス、あそこで公開しちゃって大丈夫ですか?

迷惑メールとかいっぱい届きませんか? 】


【 そこら辺は抜かりないので大丈夫ですよ。

このアドレスはさっきテキトーに作ったやつですし、もちろんHNのリンクは外しました。


というわけで、本当のメールアドレス↓に貼っておきます。

お手間ですけど、もう一度こっちにメールもらえますか? 】


【 分かりました! すぐに送ります! 】


こうして、最初にあのスレッドへ書き込みをしてから1年が経とうとしていた頃。


サクラとウルフさんのやり取りは、掲示板からメールへと変わりました。


掲示板では専らアニメの話をしていましたが、メールになってからは、普段の日常についても話すようになりました。


そこで、ふと気づきます。


私、ウルフさんの事、なーんにも知らないんだ。


そもそも、ウルフさんって何歳なんだろう?


……これくらいなら聞いても良いかな?


思い切って、今更ながらウルフさんの年齢を聞いてみることにしました。


私の予想は20代前半。


パソコンの知識が豊富で頭が良さそうだし、文章の書き方も大人っぽくて、頼りになる人だったからです。


【 答えたくなかったらスルーで全然構わないんですけど……年齢って教えてもらえますか? 】


【 いやいや、そんなの全然教えますって(笑)

俺は13です。サクラさんはお幾つですか? 】


ファッ!?


じゅ……13歳!?


私の2つ上!?


勝手に20代や大学生だと思っていた私の予想は、大いに外れていました。


【 私は11歳です。 】


【 11歳!?

本当ですか?

サクラさん、敬語をしっかり使える方だから、もっと大人かと思ってました^^; 】


お互い、かなり上の年齢を予想していたところは一緒でした(笑)


【 なんか、聞いて良かったです。

年齢近くて親近感あります。 】


【 俺もです。

これで住んでるところも近かったら面白いですよね(笑) 】


【 そこは違うと思いますけど、何地方かは聞いても良いですか? 】


【 ○○地方ですよ。 】


【 !?

え! 私もです! 】


【 ええ!?

まさかの(笑)……都道府県名はさすがにマズいです? 】


【 いや、大丈夫ですよ。

私は○○です。 】


【 嘘だろオイ……ってやつなのですがΣ(д;) 】


【 え!? 本当ですか!? 】


全国・・・いや、世界各国の人が使っているネットの世界で、

住んでいる都道府県が同じというのは、かなりの偶然です。


しかも――


ウルフさんとサクラが住んでいる場所は、隣同士の市区町村だったことが判明しました。


"さすがに、合わせている可能性もある。"


そう思った私は、超ローカルな話題を投げてみました。


ところが、普通に話が通じるのです。


何度かやり取りを続けるうちに、疑いは晴れていきました。


"本当に、近くに住んでいるんだ。"


【 偶然が重なってかなり驚いてますけど、なんか嬉しいです。


サクラさんは日本国内のどこかに居るんだって頭では分かっていても、

ネットを通じてると別世界の住人って気がしてて^^; 】


あ、私と同じ事考えてる。


【 私もです!

でもごめんなさい、勝手にウルフさんを20代前半とか思ってて。 】


【 あはは(笑)

俺も人の事言えないから大丈夫です。


実際に、見た目もかなり老けてるんで(笑)


あと、そろそろウルフはやめて下さい(笑) 】


【 いやいや、老けてるって意味じゃないんです。

あ、ごめんなさい。


ウルフさんじゃなくて、何て書いたら良いですか? 】


【 俺は、ゆうすけって名前です。 】


【 ゆうすけさんですね。

分かりました!

教えてくれてありがとうございます^^


私の名前は、ひよりです。 】


【 では……改めて宜しくお願いします、ひよりさん。 】


呼び方が「サクラ」から「ひより」に変わった。


ただ、それだけのことなのに――


なんだか、その呼び方が慣れなくて。


書かれるたびに、背中を指でツーっと撫でられたような、くすぐったい感覚がありました。


ついこの間まで、何も知らなかった画面の向こうにいるその人は――


年齢も近くて、


隣の市区町村に住んでいる、


ゆうすけさんという男の人でした────。



続く




長いメールのやり取りを続けてきた二人。

まだ、お互いの顔さえ知らない。


そんな二人が、

この夏、初めて同じ場所に立つことになる。


「もしかしたら……」


近づいた距離の先で、

待っていたのは偶然か、それとも――。


二人の物語が、少しだけ動き始める。


次回、


君とのあいだに置いたもの 

〜第2話 白球の向こう側〜


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