メイドin西川口(ハレ系)ヘルス
長閑 ひより
28歳 T161 B83(D) W57 H85
験
談
それからも、ゆうすけさんとのメールは毎日続きました。
アニメの話やローカルな話、学校の話など・・・話題は様々です。
【 ところで、ひよりさんは趣味というか、好きな事ってありますか? 】
【 趣味は……これといって特に思いつかないのですが、
絵を描く、本を読む、可愛い雑貨を集める、歌う事とかが好きですね。 】
【 おお!俺と一緒だ
あ、可愛い雑貨だけは集めませんけど(笑) 】
【 男性で絵を描くことが好きって、珍しい気がします!
私の周りには居ないんですよ。 】
【 そうですか?俺はアナログでも描くし、デジタルでも描きますよ。 】
【 デジタルって、パソコン上で描くって事ですか? 】
【 そうです。俺が持っているのは、安価なペンタブ1本だけですけど。
本当はスキャナーとか買って、アナログの絵を取り込んでからペンタブで描くっていうのが理想ですけどね。
ひよりさんは、描いたイラストをWeb上に載せたりしてないですか? 】
【 いえ、載せてない……というか、そういう事を思いつきもしませんでした(笑)
そもそも、描いた絵は誰にも見せてないんです 】
【 そうですか。
載せてれば見たかったんですけどね。 】
【 もしかして、ゆうすけさんはどこかに載せているんですか? 】
【 はい。自分のHP上に載せてますよ。
↓にURL貼っておきますので、もし興味があれば見てもらえると嬉しいです。 】
【 HPまであるんですか!!
色々知っているゆうすけさんは凄いです!!
後で見てみますね☆ 】
【 凄く無いですよ(笑)
HPはツールを使えば誰でも簡単に作れますから。
HPを作ると、自分と同じものを好きな人との交流の輪が広がるので、結構楽しいですよ。 】
早速、教えてもらったURLを検索すると、ゆうすけさんが作ったと思われるHPが表示されました。
そこにはイラストの他、ブログや掲示板などもありました。
そんなこんなで、完全に影響された私は、ゆうすけさんの協力を得ながら自分のHPを作ることになります。
見た目もシンプルで、観覧者数もほとんど無いに等しかったHPでしたが、少しずつ改良を重ねていきました。
ゆうすけさんが宣伝してくれたこともあってか、次第に観覧者数も増え、相互リンクしてくれる人も増えていきました。
アナログでしか絵を描いたことがなかった私が、デジタルで絵を描いたりもしました。
最初はマウスだけでしたが、途中からペンタブも購入しました。
今まで自己満足で描いていたイラストを褒めてもらえたり、他の人の作品を見たりするのは、とても良い刺激になりました。
絵チャ(※チャットをしながら、同じ画面上で複数人と絵を描く事。お絵描きチャットの略。)も、ゆうすけさんが教えてくれました。
次々と[知らない事]を教えてくれるゆうすけさんは、私の中で[凄い人]であり、[尊敬する人]でした。
────HPを作り始めて、1年と3ヶ月ほどが経過したある日の事。
学校から帰った私は、いつものようにパソコンを立ち上げました。
まず最初にする事は、ゆうすけさんからのメールチェックです。
ところが……。
”あれ?メール来てない。”
いつもであれば、受信ボックスに1通のメールが入っているはず。
それなのに、何のメールも届いていません。
”今日は忙しくてメール出来ないのかな?”
そう勝手に解釈しつつも、自分のHPをチェックしたり、絵を描いたりしながら、30分置きくらいに受信ボックスを確認していました。
しかし、結局その日、ゆうすけさんからメールが届くことはありませんでした。
次の日も。
その次の日も。
ゆうすけさんからのメールはありません。
メールが来なかったあの日を境に、ゆうすけさんのHPの更新も止まっていました。
”忙しいのかな?”
”体調が良くないのかな?”
”何か、気に障るような事を送ってしまったのかな?”
メールが届かない理由をあれこれ考えますが、正解は分かりません。
”もしかしたら……単純に飽きられたのかもしれない。”
気づけば、メールが来なくなってから1ヶ月が経っていました。
ちょうどその頃、家に友達のサキが遊びに来ていました。
サキと話をしている途中、何の気なしに、私はゆうすけさんの存在を話してみたのです。
(※ちなみに、前回の日記で書いたとおり、ウルフさんの存在を知っている友達はいますが、中の人であるゆうすけさんの事は、今まで誰にも話していませんでした。)
幼馴染で、私の良き理解者でもあるサキは、今までのメールのやり取りをざっと読みながら、「うーん……」と呟きました。
「私が気づいてないだけで、変なメールでも送っちゃったのかな?」
「いやいや、それは無いよ。だって、めっちゃ平凡なメールのやり取りだもん(笑)」
「だよねー……。」
「結局さ、この人とひよりってネット上だけの付き合いだから、別にメール来なくなってもしょうがないというか……そこまで気にする必要は無いと思うけど。
付き合ってるわけでも無いんだし。」
「そっかそうだね。
じゃあ、もう気にしない(笑)」
それから私は、ゆうすけさんからメールが届いているかどうかを、いちいち気にしないようにしました。
それでも、自分のHPのチェックや更新は続けていました。
とはいえ、心のどこかでは、やっぱり気になります。
だって、ゆうすけさんとのやり取りは、今始まった事ではないから。
独りよがりと言うなら、そうなのかもしれません。
それでも私にとっては、紛れもなく楽しい思い出ばかりでした。
────サクラとして掲示板に書き込みを始めた当時、小学5年生だった私は、いつの間にか中学2年生になろうとしていました。
あれから3年。
そして、ゆうすけさんからメールが来なくなって、半年ほどが経っていました。
その日、いつも使っているポータルサイトを開くと……。
新着メールのお知らせが。
”! これって、もしかして……”
私の予想は、それで間違いありません。
だって、このアドレスは[彼]の為に作ったと言っても過言ではないのですから。
逸る気持ちを抑えつつ、受信ボックスのボタンを押しました。
【 お久しぶりです。
全然メール出来なくてすみませんでした。 】
半ば諦めていた矢先に送られてきた、半年振りのメール。
ホッとしたような、ビックリしたような……不思議な気持ちになりました。
メールを送っていなかった理由は、高校受験の勉強で忙しかったからだそうです。
無事に志望校に合格し、落ち着いたところでメールをしてくれたんだとか。
(※事前にお知らせしてくれたら良かったのに……なんて考えたら負けです(笑))
これを聞いたサキは、「どんな放置プレイだよ(笑)」とツッコミを入れていました。
何はともあれ、ゆうすけさんはまた私にメールを送ってくれている。
それだけで、結果オーライです。
【 お久しぶりです!
良かった、何かあったのかな?と心配でしたが、メールもらえて安心しました
合格おめでとうございます♪ 】
【 ずっとメールしていなかったから、
(俺が言えたことじゃないけど)ひよりさん、俺の事忘れちゃったかなって思ってて。
けど、ひよりさんから返信もらえて嬉しいです。
あ、そうそう。
ひよりさんに報告というか、お願いがあります! 】
【 報告……ですか? 】
【 親に合格祝いでスマホを買ってもらいました。
ですので、これからはこっちからメール送ろうと思って。 】
【 スマホ!良いですねー、羨ましいです 】
【 電話帳に一番最初に登録したのは、ひよりさんです(笑) 】
【 え!良いんですか?
そんな貴重な一番最初の登録が私で。 】
【 (笑)
いやいや、それで良いんですよ。
俺がそうしたかったので。 】
私のメールは相変わらずパソコンからだった為、ゆうすけさんの返信は日中や朝に来ることがあっても、私の返信は夕方か夜のままです。
そして、何気ないメールのやり取りをパソコンとスマホで繰り返し、さらに1年ほどが経過しました。
ついに私も高校生になりました。
ゆうすけさんと同じく、高校入学のタイミングでスマホデビュー。
もちろん、ゆうすけさんに自分のスマホのアドレスを教えたので、これで日中でも朝でもメールが出来るようになりました。
高校生になると、小学生や中学生だった頃には無かった行事が行われるようになります。
その1つが、高校野球の全校応援。
ご存知かと思いますが、メインの大会の前に、まずは地区予選が行われますよね。
私が在籍していた高校の野球部は、弱小校の部類に入っていました。
地区予選の段階で敗退することなど、当たり前だったようです。
それでも、自分の高校の野球部には勝ってほしい。
1勝でも良いから勝った喜びを、皆で分かち合いたい。
そんな思いからなのか、特に応援団と3年生の力の入れようは凄かったです。
大きな声を出すのはもちろんの事、音楽に合わせて軽くダンスをしながら応援する場面もあるので、練習は想像以上にハードでした。
先輩達の熱血指導に、私達は圧倒されっぱなしです。
昼休みと放課後を返上した応援練習を終え、友達数人と「疲れたねー」なんて言いながら帰りのバスに揺られている途中、ゆうすけさんからメールが届きました。
カバンの中にスマホを入れたまま、チラッとメールを確認します。
【 ひよりさんって○○高校でしたよね? 】
【 はい。 】
【 もし、ひよりさんの高校が勝ち進めば……次の対戦相手は○○高校ですよ。 】
”えっ!○○って……ゆうすけさんが居る高校だ!”
思わず、隣に居たサキの肩を素早く数回叩き、自分のスマホを見るように促します。
スマホを覗き込んですぐに、サキは事態を理解したようで、
「マジで!?」
と、目を見開いて私を見ました。
私が興奮気味にコクンと大きく頷いていると、他の友達が気にする素振りを見せていたので、なんとか誤魔化します。
で、少し話を端折りますが、結果的に私たちの高校は二回戦へ進出する事が出来ました。
試合帰りの大型バスの中、私とサキは早くも二回戦目の話で盛り上がっていました。
「良かったね!ひより!
もう別の意味で優勝だわ(笑)」
「うん!……って、優勝は違う(笑)」
”ゆうすけさんの顔は知らない。
それでも……長い間メールでやり取りしてきたその人が、同じ空間に居る。
それだけで嬉しい。”
「こっそり会っちゃえば?(笑)
顔、分かるんでしょ?」
「いやいや(笑)
他校とはダメって事になってるし……。
そもそも、ゆうすけさんの顔分からないし。」
「は!? 彼の顔知らないの!?
てか、向こうもひよりの顔知らないんかい!」
サキは食い気味で私に詰め寄ります。
「ええ……そんな驚く?」
「驚くよ、そりゃw
だって……ずっとやり取りしてたんでしょ?」
「まぁ……掲示板の時と合わせると、もう5年くらいになる、かな?
でも、スマホに切り替えたのって高校に入学してから、つまり最近だし。」
「5年!?長っww
てか、顔知らないんじゃ、お互いを認識出来ないまま終わっちゃうでしょ。」
「うーん……知ってたとしても、反対側に居るわけだから、顔まで見えないと思うよ。」
「双眼鏡持ってく!」
そう言いながら、サキは筒のように丸めた両手を目に当て、双眼鏡のジェスチャーをしました。
「ええwww」
散々ブーブー言われましたが、私が自分の顔を送らなかったのは[送れない状況だったから]という理由だけではありません。
自分の顔なんて撮った事もないし、撮りたくもない。
それに、自分の顔に自信が全く無かった。
だから、事前に顔の画像を送るなんて絶対に無理で、嫌だったんです。
ゆうすけさんも、私がどんな顔をしているのか気になっていたかは定かではありません。
それでも、二回戦の試合前日まで、私達はいつも通りの内容のメールを送り合っていました。
────二回戦当日の朝がやってきました。
昨夜はなかなか寝付けないまま朝を迎えてしまったので、案の定、寝不足です。
早朝にグラウンドへ集合した私達は、クラスごとにバスへ乗り込みます。
自由席だったので私はサキの隣に座りました。
……と言うより、サキがバスに乗る直前まで私の腕をガッチリとホールドしていたので、必然的にサキの隣です。
周りの席の友達と話したり、お菓子を食べたり。
バスの中は、和気あいあいとした時間が流れていました。
そんな中、私のスマホが小刻みに数回震えました。
あ、もしかしてゆうすけさんかな?
スマホの電源ボタンを一度押すと、画面にはゆうすけさんからのメールが一部表示されていました。
[ ひよりさん、おはようございます。
先ほど、バスが球場に向かって出発したところです。
ひよりさん達はもう向かっている最中ですか? ]
[ おはようございます!
はい、そうです。
うちの高校の方が野球場から遠いので^^;
あと1時間くらいで到着予定ですよ。 ]
[ それだと……到着は同じくらいか、ひよりさんの高校の方が少し早いかもしれませんね。 ]
[ ちなみに、ゆうすけさんは応援団ですか? ]
[ まさか(笑) ]
もし応援団だったらかなり絞れるけど……そっか。普通に応援してるんじゃ、まず分からないよね。
「どう? 向こうは今どこら辺だって?」
隣に座っていたサキが、イカそうめんを食べながら私のスマホを覗き込みました。
「あ、一本ちょうだいw」
「はいよ」
「んとね、同じくらいか、私達の方がちょっと先に着くみたいだよ」
「出待ちでもしとく?」
「いやいやw」
「やっぱこれで頑張るしかないかー・・・」
そう言いながら、サキは自分のカバンから双眼鏡を取り出しました。
「ホントに持ってきたの?(笑)」
「もちろん♪」
そんな話をしているうちに、バスは野球場の駐車場へ入っていきました。
バスが停車し、降りようとしたその時。
「あ! ひより!!」
「えっ?」
「ほら! あのバス……○○高のバスじゃない?」
サキが窓の外を指差します。
「てか、そうだよ! 高校の名前書いた紙が貼ってある!」
「!」
サキが指差した方向へ振り返ると、こちらへ向かって近づいてくる複数台の大型バスが見えました。
ぼんやりとしか確認できませんが、確かに、ゆうすけさんが通っている高校の名前が書いてあるように見えます。
すると、片手に持っていたスマホが震えました。
[ もしかして、ひよりさん達も今着きました? ]
[ はい! ゆうすけさん達のバスが見えます! ]
[ やっぱり。 ]
[ 何号車に乗っていますか? ]
そう送ろうとしたのですが、
「早く降りろー!」
という引率の先生の声に焦り、そのメールを送ることなく駆け足でその場を離れました。
どうやら、私達が駐車場を離れるのを確認してからでないと、向こうの生徒はバスから降りないようです。
「くっそー……さっき○○高の人達を見れる唯一のチャンスだったのに」
サキは悔しそうに顔をしかめます。
「ゆうすけさんに聞く前に移動しちゃったから、結局どこに乗ってたのか分かんなかったや」
「まぁ、バスはしょうがないとして、ざっくりでもいいから、彼がいる客席の位置を教えてもらったら?」
「そ、そうだね……。というか、どうしよう……もう応援どころじゃないんだけど
せっかく覚えた振りも忘れそう(笑)」
「落ち着け(笑)」
とりあえず、ゆうすけさんにメールっと……。
[ 私は手前の段の左の方にいます。
ゆうすけさんはどこに居ますか? ]
[ 俺は、奥の段の真ん中辺りですね。
手前から1年、2年、3年の順に並んでます。 ]
「奥の段の真ん中辺りだって!」
「おっけー」
サキは用意していた双眼鏡を使って、向こう側の客席を確認します。
「あれ、全然ズームできないから、あんま意味ないわw」
「ええw」
そんなこんなで、ゆうすけさんの姿は確認できないまま試合が始まりました。
試合中はスマホ禁止なので、ゆうすけさんと連絡を取ることもできません。
たまに向こうの客席――特に奥の段の真ん中辺りをチラッと見て、
ゆうすけさんも一生懸命応援してるのかなー
なんて勝手に想像したり、
ゆうすけさんの制服ってブレザーなんだ……
と、新たな発見をしたり。
そんなことを考えながら、私は応援していました。
肝心の試合はというと、ゆうすけさんの高校が快勝。
二回戦は、あっという間に幕を閉じました。
試合の余韻もそこそこに球場を後にし、駐車場へ向かっていると、パラパラと弱い雨が降ってきました。
「今日って雨の予報なんかあった?」
「ううん。今日は降水確率低かったと思うけど……。
まぁ、天気雨だし、すぐ止むよ」
私の予想通り、雨はバスが駐車場を出発してから10〜15分ほどで止みました。
ふと、バスの窓から外を見ると、空に小さな虹が浮かんでいます。
虹だ!……ゆうすけさんに送ろうっと
手に持っていたスマホのカメラを起動して、空を映します。
少しブレてしまいましたが、なんとか虹を撮ることができました。
さっそくメールを送ろうとした、その時。
既にゆうすけさんからメールが届いていました。
[ ひよりさん、応援お疲れ様でした。
直接会うことは無かったですが、
同じ空間にひよりさんが居るって思うと、もう試合どころじゃ無かったです(笑)
ひよりさんの高校も女子はブレザーなんですね。
俺、学ラン派だから、ひよりさんの高校の男子が羨ましいw ]
あ……ゆうすけさんも私と同じこと考えてて、同じことに気づいてたんだ。
返信しようとしたところへ、さらにメールが届きました。
[ そうそう。さっき虹が出てましたよ。
虹を見ると良いことがあるそうなんで、貼っておきますね。
我ながらよく撮れた一枚です(笑) ]
あれ、また同じことしてる(笑)
スマホの画面を見ながら、思わず笑みがこぼれました。
良い事なんて、
もう、、ずっと前から起きてますって。
[ ゆうすけさんもお疲れ様です!
そして三回戦進出おめでとうございます!
こっちは、たくさん練習して覚えたはずの振りが所々抜けちゃって大変でした(笑)
ブレザーは学校によってデザインが様々で個性があるので、ブレザーも良いと思いますよ
写真ありがとうございます。
私も虹を撮ろうとしてたんですけど、
ゆうすけさんみたいに上手くは撮れなかったです ]
そう書いたメールに、さっき撮影したブレブレの虹の写真を添付して送信しました。
─────次の日の昼休み。
私と友達合わせて6人くらいで雑談するのは、いつものことです。
最近は、そのうちの何人かの恋愛話を聞くのがブームというか、話題の中心になっていました。
高校に入学してから、まだ3ヶ月も経っていません。
それでも、中学から付き合っているカップルもいれば、中学からずっと片想いしている子や、高校に入学してから片想いをしている子もいます。
人によっては、こういう話を「ノロケ」だと捉えて、聞くのが嫌だったり苦手だったりする人もいるらしいですが、私は平気……いや、むしろ好きです。
だって、すごく楽しそうに、時に照れながら一生懸命話している友達の表情はキラキラしていて、とても幸せそうで、すごく可愛いから。
見ているだけで癒されるんです。
両思いの場合は、
「この間のデートはこんな感じだった」
「こんなこと言ってくれた」
「○○してくれた」
なんて話を聞くと、この先もずっと友達と彼氏さんが仲良しでいられますように、なんて思います。
片想いの場合は、両思いになれるように頑張っているんだなぁというのが伝わってきて、応援したくなります。
もちろん、幸せな報告ばかりではありません。
ケンカしちゃったとか、倦怠期だとか、悩みや相談の話になることもあります。
それでも、大半はハッピーな話。
聞いているこっちの心まで、ぽかぽかしてきます。
その日の学校帰りは、サキと二人で行きつけの喫茶店へナポリタンを食べに行きました。
他にもホットケーキとかグラタンとか、何を食べても美味しいのですが、私達のお気に入りはナポリタン。
料理はすごく美味しいのに、場所に少し問題があるのか、地元の人じゃないと気づかないような場所にあるからなのか、店内は騒がしくなく、落ち着いていて居心地が良い。
それも、私達がよく通っている理由の一つです。
「りんちゃん、念願叶ってケイタ君と付き合えて良かったよね。
この間は隣のクラスの子が告白してOKもらったって聞いたし続々とリア充が増えてる(笑)」
私はそう言いながら、テーブルに置かれた水を一口飲みました。
サキは水を飲まず、右手に持ったコップをただ見つめています。
「サキ? どうしたの?」
するとサキは、コップから私へと視線を移しました。
「ひよりは、どう思ってるの?」
「え? 幸せなことだと思うけど……」
「じゃなくて。
ひよりは、皆の恋バナ聞いて、羨ましいなーとか、私もそうなりたいなーとか思わないの?ってこと」
「羨ましい?
そもそも、相手が居ないんじゃ思いもしないよ(笑)」
……恋なんて、
誰かがするものであって、
私はそれを聞いているだけで十分。
私にとって恋愛はファンタジーで、恋バナは非現実的な物語を聞いているような感覚でした。
ディズニー映画のように、キラキラで、ワクワクして、心が満たされるような素敵な話。
だけど、
実際には起こり得ない。
私には関係のないこと。
ずっと、そう思っていました。
「彼は、ひよりの何?」
サキは続けて私に尋ねました。
「何って……」
そんなこと、考えたこともなかった。
「二人はずっとこのままで良いの?」
「私は、今のままで十分楽しいよ」
「彼もそう思ってると思う?」
「え……楽しくないってこと?」
「違うよ、そうじゃなくて」
サキは何が言いたいの?
違うって、何が?
考え込んでいると、ちょうどナポリタンが運ばれてきました。
「とりあえず、食べよっか」
「あ、うん」
考え事をしているからでしょうか。
その日のナポリタンは、あまり味がしませんでした。
「うちから見た感じだと、ひよりと彼は相性が良いと思うよ。
じゃなきゃ、会ってもいない人と、こうやって何年もやり取り続けられないでしょ」
「確かにそうかもね。
ゆうすけさんはどうか分からないけど、好きなこととか考え方とか似てる気がして、やり取りしててすごく楽しい」
「……問題は、二人とも超が付くほどの奥手ってことだけど……。」
「ん?」
「いや、こっちの話」
その後は別の話題に切り替わったので、サキの言葉の意味は分からないまま、喫茶店を出て、それぞれの家へ帰りました。
宿題やHPの更新、入浴を済ませてベッドに寝転び、一息ついていると、ゆうすけさんからメールが届きました。
[ 唐突ですが、ひよりさんって電話は苦手ですか? ]
[ いえ、苦手じゃないですよ ]
[ もし良ければなんですけど、
今度……電話で話してみませんか? ]
で、電話!?
ゆうすけさんと!?
本当に唐突な内容に、思わず上半身を起こしてメールを二度見しました。
驚きつつも、
[ 全然良いですよー ]
と返信します。
すると、すぐに返事が届きました。
[ やった☆
そしたら……さっそくですけど、明日の20時頃とかどうですか? ]
[ はい、大丈夫です ]
[ ありがとうございます。
じゃあ、今日はもう寝ますね。
お休みなさい(vωv) zZZ ]
続く
まだ何も始まっていない。
そう思っていた。
けれど、振り返れば、
あの日の言葉も、
あの日の笑顔も、
すべてが少しずつ繋がっていた。
気づかないうちに芽吹いていた、
小さな何か。
それが何なのかを知るのは、
もう少し先のこと──。
次回、
君とのあいだに置いたもの
第3話 名前のない気持ち
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