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るり

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るり
6月18日15時12分
by るり
るり(エステティーク谷九店) 【『従軍行』】

 どうも、ルリです。夏目漱石(1904年)『従軍行』を読んだ。本作は日露戦争さなかの1904年5月10日に発表された、昂揚する士気と戦場の生々しさが雄勁に詠まれた詩である。
 私は詩に全く通暁していないため表現が相応しくない部分も有り得るうえ、私の解釈違いで正解から外れている箇所も大いにあるかと思われるが、そこは御愛嬌だ。本作は7部構成であり、それぞれ主に
・一➔敢闘精神の昂揚
・二➔戦地に赴く覚悟
・三➔戦場に響く刀の音
・四➔戦場の不穏さ
・五➔不穏さに抗い戦場と向き合う姿
・六➔改めて戦い続ける覚悟
・七➔さらなる士気の昂揚、八百萬神の存在
が詠み上げられている。その中でも印象的であったのは下記である。



  「粲たる七斗は、御空のあなた、
        傲る吾讎、北方にあり。」※1
  「天に誓へば、岩をも透す、
        聞くや三尺、鞘走る音。
  寒光熱して、吹くは碧血、
        骨を掠めて、戞として鳴る。
  折れぬ此太刀、讎を斬る太刀、
        のり飮む太刀か、血に渇く太刀。」※2
 


 まず※1は「二」の一部である。「粲たる七斗は、御空のあなた」では、北斗七星の輝きを湛える空を見上げて大切な人を想いつつ、その空が続く先の北方に居る「吾讎」と戦う覚悟を決めている。1つの星空を見つめる眼に異なる思いが映る光景は、美しくも悲しく、そして静かな強さを感じられる。
 次に※2は「三」の引用である。「岩をも透す、聞くや三尺、鞘走る音」では、「岩をも透す」という表現が鞘を払った際の鋭く澄徹した音を、より冴え渡らせている。また「寒光熱して、吹くは碧血」は、「寒光」が白刃の輝きと大陸の冬の寒さを以て、冷たく眼を撃つ印象がある。そしてその冷たく白い輝きを、吹き出す碧血が熱を持って染め上げ、視界を瞬く間に塗り替えていく。
 そのうえ「骨を掠めて、戞として鳴る」では、隙のない斬撃の応酬で鳴り合う刀の音が、一振りごとに緊張感を高めていく印象がある。
 最後に、「折れぬ此太刀、讎を斬る太刀、のり飮む太刀か、血に渇く太刀」では語末に“太刀”を並べることで、刀が交わり合う際の重く鋭い金属音が残響となって耳に残る感じがある。


 ちなみに本作を読むきっかけとなったのは、寺田寅彦(1928年)『夏目先生の俳句と漢詩』にあった、「ともかくも先生の晩年の作品を見る場合にこの初期の俳句や詩を背景に置いて見なければ本当の事は分らないではないかと思う事がいろいろある」※3 という記述である。
 漱石の作品で既に読み終えたのは『坊っちやん』(1906年)、『夢十夜』(1908年)、『こころ』(1914年)で現在『満韓ところどころ』(1909年)を読んでいるが、寺田の言う晩年の作品だけでなく、他の作品にも漱石の詩や俳句の気配が感じられるのではないかと、つい考えてしまったわけである。



 ほんじつも精一杯お癒やししますので、のんびりしていってください。よろしくお願いいたします。
―――――――
《参考文献》
※1 夏目漱石(1904年)『従軍行』、青空文庫、3頁。
※2 同上、4頁。
※3 寺田寅彦(1928年)『夏目先生の俳句と漢詩』、青空文庫、2頁。

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