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るり

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るり
6月21日13時12分
by るり
るり(エステティーク谷九店) 【『蚊帳の研究』】

 どうも、ルリです。寺田寅彦(1908年)『蚊帳の研究』を読んだ。本作は蚊帳嫌いの寺田が蚊帳の特徴を分析し、理想の蚊帳を考える作品である。寺田らしい遊び心溢れる筆致でありながら、蚊帳の温度や通風性・色合い・形状・繊維・材質といったあらゆる要素を詳らかかつ科学的に分析していく様子は、科学者としての寺田の顔を確として見せてくれている印象がある。
 さて、印象深かったのは下記である。※1は蚊帳の通気性の悪さを指摘したあとの記述で、※2は※1の後に続いた記述である。



  *「一体蚊を防ぐのが目的ならばもう少し目の粗い布を使ったらよさそうなものである。試みに宅の蚊帳の目を数えてみたら一寸四方の中に平均九百ばかりの目がある。いくら小人島の蚊でもこんな細かい目を潜って侵入する奴はあるまい。木綿の幌蚊帳の方を数えたらこれは四百くらいであったが、これでも細か過ぎると思う。なるほど布の目には粗密がある、長く使っていれば処々に目の大きい処が出来てそこから蚊がはいるかも知れぬが、それにしても今日一般の蚊帳の目は細か過ぎている。」※1
  「蚊帳の色は一般に萌黄と相場が極っている。何故萌黄に限ったのだろう。見て涼しいという点ならもう少し涼しい色はいくらでもある。透して外の物がよく見えるためならもう少し黒い色がよかろう。蚊帳の色も何とかしたいものである。
 蚊帳を釣ると上が垂れて鬱陶しい。これも何とかしたい。真中で釣手をつけて天井へ釣るか、それとも外に工夫はないだろうか。」※2*


 
 寺田は『天河と星の数』(1908年)において、銀河に合わせた天球を数千の区画に分割し、各区画中の星の数を数えるというストローバン(ベルギーの天文学者)の研究に触れており、ストローバンが最低でも数百万以上の星を数えていることに驚嘆していた※3。
 しかしながら、自宅の蚊帳の一寸四方の目の数を900ばかり数え上げたのち、木綿の幌蚊帳の目も同様に400ほど数えるというなかなかな努力を、探究心のままに成し遂げた寺田も大変立派だろう。そのうえ、確認できた目の数から蚊帳が快適でない一因を見出しているため、着眼点の正確さにも恐れ入る。
 また、そうした手間のかかる分析のみならず色彩や蚊帳を釣った際の形状の不便など、感覚的に捉えやすい箇所の記述は「涼しい色はいくらでもある」「鬱陶しい」など素の寺田の声が挟まっていて微笑ましい。
 こうした分析もありつつ、湿気を帯びた伝導帯である蚊帳が落雷からの防衛に役立ち得るという興味深い点にも触れられているため、数頁ながらも読み応えがあった。さらに、他の作品との繋がりも感じられるという新たな面白さにも気づけたため、今後も読み進めるのが楽しみである。


 ほんじつも精一杯お癒やししますので、のんびりしていってください。よろしくお願いいたします。
―――――――
《参考文献》
※1 寺田寅彦(1908年)『蚊帳の研究』、青空文庫、2頁。
※2 同上、2-3頁。
※3 寺田寅彦(1908年)『天河と星の数』、青空文庫、2頁。

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