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るり

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るり
8月5日16時20分
by るり
るり(エステティーク谷九店) 【『アラスカの氷河』】


 どうも、ルリです。中谷宇吉郎(1966年)『アラスカの氷河』を読んだ。本作はアラスカの氷河の形状や位置、規模といった地理的解説と、そこに浮かぶものと同規模の大きな氷の結晶を人工生成することの難しさが綴られた作品である。
 本作で中谷は、アラスカの州都・ジュノーから北西へ上がった位置にあるメンデンホール氷河に一抱えくらいの大きな氷の単結晶が転がっていることを紹介し、それがいかに壮大なことであるのかを綴っているのだが、その記述が非常に印象的であった。それが下記である。



  「……氷の大きい結晶をつくることは、非常に困難で、現在の知識の粹をつくして、一所懸命やっても、人差指くらいの結晶をつくるのに、一週間もかかる。それもよほど運のいい時でないと、出來ない。
 ところが、アラスカの氷河の末端へ行くと、一抱えもあるような、氷の大きい結晶が、いくらでも、轉がっている。カナダロッキイの頂に降った雪が氷河になって何千年もかかって、強大な壓力の下で、ゆっくり流れ降りて來る間に、結晶がだんだん生長するのである。人間の知識が、これほど進歩しても、まだまだ天然にはかなわない。」※1


 
 1936年に世界初の人工降雪に成功した物理学者である中谷が、大きな氷の結晶の人工生成について「現在の知識の粹をつくして、一所懸命やっても……運のいい時でないと、出來ない。」と綴っている部分には、自身の苦労や努力の交じった生の声を感じられる。それがいかに難しいことであるのかが、素人である私にも痛いほど伝わるくらいである。
 なお、上記箇所の前で中谷は氷の結晶について解説しており、自然界で池の水が凍って出来る天然氷も冷凍庫などで生成される人造氷も、本当の結晶とは言えないと述べている※2。というのも、これらの氷は小指の先ほどの小さな氷の結晶があらゆる向きに何千・何万と集まって出来た多結晶であるため、それそのものが純粋な1つの結晶(単結晶)ではないためであるという※3。
 そのうえで、アラスカの氷河にいくらでも転がっている大きな氷の結晶は一抱えもある単結晶で、かつそれが幾星霜の自然の営みの産物であるということに「人間の知識が、これほど進歩しても、まだまだ天然にはかなわない。」と綴る中谷には、自然への畏怖と自然に比した時の人間の及ばなさへの認識という謙虚な姿勢を感じられた。氷雪の研究に人生を捧げ、真摯に自然と向き合ってきた中谷だからこそ、自然にこうした言葉が溢れ出たのかもしれない。


 ところで近年の氷の結晶の人工生成について調べたところ、新潟県のサカタ製作所が長岡技術科学大学と共同で単結晶氷の製造に成功していた※4。大きさも飲食店のコップに入っている氷と同じくらいのものから、さらに大きなものまである。中谷がアラスカで見たものよりは小さいと思われるが、研究がさらに進めば一層それに近い大きさのものが作られると考えられる。
 ここまで調べ終えて、中谷が研究室で人工雪を生成したり本作を書き上げたりしていた時代から数十年を経て、発達した技術と叡智によって単結晶氷が製造可能となったことには、門外漢ながら感銘を受けた。そして、中谷がそれを見たらどんなに喜ぶだろう、と勝手ながら想像してしまいもした。
 「自然を制御する」といった思い上がる心では無く、自然への畏怖と共存の精神を持った中谷のような科学者が、今後も増えてほしい限りである。


 ほんじつも精一杯お癒やししますので、のんびりしていってください。よろしくお願いいたします。
―――――――
《参考文献》
※1 中谷宇吉郎(1966年)『アラスカの氷河』、青空文庫、3頁。
※2 同上、2頁。
※3 同上。
※4 サカタ製作所「単結晶氷とは?」、こどものこおりごきげん、2026/08/05/15:40閲覧。

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