放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

昼休みになるとクラスの何人かは学食へ向かう。楽しそうに話しながら廊下を歩いていく姿を、私は自分の席から少しだけ眺めていた。
あそこはたぶん最初から私の行く場所じゃない。声が大きくて、友達が多くて、並ぶことに何の抵抗もない人たちの場所だ。
私は弁当を持って
いつものように校舎裏へ向かう。
人はいない。風の音だけがする。
私は校舎の壁に背中を預けて立ち止まりそのまま弁当を開いた。ここでは座らない。いつも立ったまま食べる。
一口目を食べようとしたとき
手が少し滑って、唐揚げが地面に落ちた。
私は唐揚げを拾い上げ、砂を軽く払って何事もなかったように口に入れた。
味は変わらない。
そのときだった。
植え込みの向こうから
声が聞こえてきた。
「……ずっと、好きでした」
続いて、戸惑ったような女子の声。
「急にそんな……」
告白だと分かる。
私は唐揚げを噛んだまま固まった。
壁にもたれ弁当を持ったまま
動く理由もタイミングも見失う。
逃げれば音がするし、戻れば確実に見える。
だから私は校舎の壁の一部みたいに立ち尽くすしかなかった。
その瞬間、告白していた男子と目が合った。
彼の顔が一気に「終わった」という表情になる。遅れて女子のほうもこちらに気づいた。
三人で無言。
風だけが吹く。
私はとりあえず口の中の唐揚げを飲み込み
壁にもたれたまま小さく頭を下げた。
二人は何も言わず
その場から離れていった。
とても速く。
私は一人で残り
弁当の続きを食べる。
榊ノ下さえ、5日目。
今日は誰かの気持ちがこぼれた場所で
私は唐揚げを拾って食べた日だった。
榊ノ下さえ。
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