放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

榊ノ下さえ、11日目。
あれだけアラームをかけたのに、普通に遅刻した。目を開けた瞬間に時間を見て、全部を理解した。
急いで着替えて、鞄をつかんで、台所に行って、そこにあった食パンを全部腕に積んだ。
積み上げると小さな塔みたいになった。
食パンタワー。
それを抱えて外に出て、走る。
風で何枚かずれて、端っこがちぎれて、パンくずが後ろに散る。でも気にしない。鳩が食べるし。
そして曲がり角で
誰かとぶつかった。
同級生の男子だった。
衝撃でパンの塔が崩れて
白い四角が道路に散らばった。
同時にメガネもどこかに飛んだ。
世界が急にぼやける。
男の子は一瞬固まってから「あっ」と小さく言って、慌ててパンを拾い始めた。
私もしゃがんで、近くに落ちていた一枚を取ってそのままかじった。味は変わらない。朝から何も食べてなかったから、むしろいつもよりおいしい。
男の子はパンを拾いながら途中で動きを止めた。手に持っていた一枚を落としそうになって、慌てて掴み直す。
それから、なぜか何も言わなくなった。
口が少し開いたままで
閉じ方を忘れたみたいだった。
ただ、そこで止まっている。
そのとき、足元に黒いフレームのぐるぐる眼鏡落ちているのが見えた。踏まれなくてよかったと思いながら拾って、軽く汚れを払ってかける。
ぼやけていた世界が、元に戻る。
私は地面のパンを拾い集めて
両腕で受け取った。
男の子の手の上に残っていた分も
そのまま受け取る。
「ありがとうございます」
と言って、また走り出す。
食パンタワーを抱え直して前だけを見る。
後ろでしばらく足音がしなかった。
榊ノ下さえ、11日目。
食パンは地面に落ちても
普通に食べられる。
榊ノ下さえ
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