放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

榊ノ下さえ、15日目。
今日は学校で特に何もなかった。
机はなかった。
椅子もなかった。
自分の席の場所には
いつもの床だけがあった。
もう慣れたので、鞄を置いてそのまま正座する。一時間目も正座。二時間目も正座。
途中で先生が黒板の前からこちらを見て
「榊ノ下さん、姿勢がいいですね」
と言った。
ほめられたので、少しだけ背筋を伸ばした。
正座マスターなので足はあまり痺れない。
たまに存在を忘れるくらい。
昼休みも、床で弁当を食べた。
教室の隅で、正座のまま。
もう誰も気にしない。私も気にしない。
そういう日常になった。
放課後、家に帰る。
靴を脱いで鞄を置いて、自分の部屋を通り過ぎて、そのまま台所へ行く。制服を脱いで、代わりにパン職人の服に着替える。
白いシャツ。エプロン。
ちょっと大きい帽子。
気分だけは職人。
今日はパンを作る日だ。
理由は単純で、また寝坊するから。
対策が必要。
粉を量って、ボウルに入れる。
砂糖と塩とイーストも入れる。
水を少しずつ足して、混ぜる。
まとまってきたら、台の上でこねる。
叩く。伸ばす。折る。また叩く。
途中で無になる。
手だけが勝手に動く時間。
気づいたら、生地がちゃんと生き物みたいな触り心地になっている。発酵させて、その間に次の生地を作る。
プレーン。チョコ。チーズ。
あんこ。カレーパン用のやつ。
丸いの。細長いの。
ちぎると楽しいやつ。
成形して、並べて、また待つ。
それから台所の奥にある業務用のオーブンのスイッチを入れる。家にあるには少し大きすぎるやつ。パン屋がそのまま引っ越してきたみたいなやつ。
中に天板を入れて、扉を閉める。
低い音で、ずっと動いている。
オーブンの前に座って、しばらく眺める。
パンが少しずつふくらんで色がついてくる。
部屋が完全にパン屋のにおいになる。
だいたい成功。
これだけあれば
寝坊しても三日は生きられる。
少し安心する。
榊ノ下さえ、15日目。
今日は学校に机も椅子もなかった。
でも姿勢はほめられたし、パンも焼けた。
だいたい順調な一日だった。
榊ノ下さえ
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