放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

俺の名前は山田太郎。
食パンタワーを持った榊ノ下と角でぶつかったクラスメイトの男子だ。ちなみに数学は100点だった。
俺は最近、家を出る時間を30分遅らせている。
理由は単純だ。あの角でもう一度榊ノ下さえとぶつかりたい。ただそれだけ。
その一心で俺は毎朝あの角に立っている。別に待ち伏せじゃない。通学路が同じなだけだ。
もっとも毎日ギリギリまで待っているので最近は毎日遅刻している。当然、先生には毎日怒られる。
「山田!!また遅刻か!!」
「すみません」
数学が100点でも遅刻すると怒られる。この学校の評価制度にはまだ改善の余地があると思う。
そんなことを考えながら今日も俺はあの角に立っていた。
時計を見る。もうすぐ始業時間だ。
今日はもう来ないのだろうか。
そろそろ諦めて学校に向かおうとした、そのときだった。遠くからものすごい勢いで走ってくる女子高生が見えた。
大きなぐるぐるメガネ。見覚えのある髪型。
そして、胸に抱えられた巨大な黄色い物体。
榊ノ下さえだ。間違いない。
ついに来た。
だが、何かがおかしい。
榊ノ下は胸に北海道蒸しチーズケーキのクッションを抱えていた。
寝坊して慌てていたのだろうか。パンとクッションを間違えたのかもしれない。そういうところも可愛い。
俺は自然を装って角の少し手前に立つ。
距離を測る。速度を計算する。このままいけば、あと数秒で彼女と再び衝突するはずだ。
数学100点の俺に計算ミスはありえない。
しかし、そのときだった。
榊ノ下の背後に、もう一人走っている男がいることに気づいた。明らかに学校の生徒ではない男。
榊ノ下とまったく同じ速度で走っている。彼女が加速すれば、男も加速する。彼女が少し減速すれば、男も減速する。距離は一定。
……おかしい。
偶然、同じ方向に走っているだけだろうか。いや、それにしては妙だ。男の視線はずっと榊ノ下の背中に向けられていた。
俺がその男に気を取られていたほんの数秒。榊ノ下が目の前を通り過ぎた。
あっ待って。ちょっと待って。
榊ノ下は北海道蒸しチーズケーキを抱えたまま、ものすごい勢いで走り去っていく。ぶつかれなかった。
何やってんだ俺…
いや違う。重要なのはさっきの男だ。
あいつは一体何者なんだ。
すると男の右手に、何かが光った。刃物だった。男はそれを握りしめたまま榊ノ下との距離を急速に縮めていた。
その瞬間、俺はすべてを理解した。
あいつただの通行人じゃない。榊ノ下を狙っている。そして彼女はまだ気づいていない。
一気に血の気が引く音がした。
まずい。このままでは間に合わない。
俺はもう考えられなかった。
静かに息を吐き、そして全身に電気を巡らせる。
念能力。神速(カンムル)。
次の瞬間、俺の姿はその場から消えた。地面を蹴る音すら残さず、風を切って男との距離を一瞬で詰める。
男が刃物を振り上げようとした、その瞬間。俺は背後から男の首に腕を引っかけた。
「……!?」
男が振り返るよりも早くそのまま近くの路地裏へと引きずり込む。一瞬の出来事だった。
「ひっ……ひいっ!!」
男が情けない声を上げる。
「な、なんだお前!!いったいどこから……!!」
俺は男を見下ろした。
「ああ……」
制服の袖を軽く直す。
「癖になってんだ、音殺して歩くの。」
男の顔から血の気が引いていく。
「ま、待て!!俺はただ……!!」
その言葉が最後まで続くことはなかった。
路地裏に、男の悲鳴が響き渡った。
俺は路地裏から出て
何事もなかったように制服を整えた。
時計を見る。完全に遅刻だ。
今日も先生に怒られるだろう。
数学は100点なのに。
まあいい。
あの大きなぐるぐるメガネの奥にある秘密を、今日も守ることができたのだから。
俺は静かに学校へ向かって歩き始めた。
山田太郎。
特別な名は、ない。
ただ、ゾルディック家とは遠い親戚だ。
おわり
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