放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

その日の放課後。
昼休みとは違って廊下は静かだった。
部活に向かう足音が遠くに流れていくくらいで、さっきまでのざわめきが嘘みたいに消えている。
窓の外は少しだけオレンジ色で
時間がゆっくりになったような気がした。
私は職員室のドアの前で一度止まる。
ここに来る理由はある。
部活を作る。そう決めたから。
軽く2回ノックをして扉を開ける。
「失礼します」
紙とインクと、少し古い空気の匂いがした。
「どうしました?」
顔を上げたのは戸田教頭だった。
相変わらず、忙しそうな顔をしている。
「あの、部活を作りたいです」
言うと、少しだけ間があいた。
「……部活ですか?」
「はい」
「何部ですか?」
私は少し考える。
そういえば決めていなかった。
「……これから決めます」
戸田教頭はゆっくり頷いた。
「なるほどね。部活というのはですね、学校教育の中でも非常に重要な位置を占めていてですね。」
早い。言葉が速い。
「単なる課外活動ではなく、生徒の自主性や協調性を育てる場でもあるわけで。例えて言うとラグビー部なんかは顕著で、チームワーク、規律、体力、そういったものが総合的に養われるんですよね。」
一文が長い。
「で、体力といえばやっぱり筋トレですよ」
急に話が変わった。
「筋トレはね、裏切らないんですよ。やった分だけちゃんと返ってくる。これって実はすごいことで。」
戸田教頭の声が、少しだけ楽しそうになる。
「スクワット、ベンチプレス、デッドリフト。この三つが基本です。特にスクワットがおすすめです。下半身はすべての土台なので。」
私は聞いている。
たぶん。
「最初は自重でよくて、フォームを大事にしてください。そして毎日少しでもいいから続ける。」
部活の話はどこに行ったんだろう。
「最近筋トレしかしてないんですよ」
戻ってこなさそう。
私は少しだけ視線をずらす。
窓の外が少し暗くなっている。
ここに来てどれくらい経ったんだろう。
「……というわけで。部活を作るなら条件があるんですよ。」
私は顔を上げる。
「最低三人、人を集めてください。顧問も必要だし、申請も必要だし、色々手続きはあるんですけど」
三人。
「まずは人数が必要で」
私は少しだけ考える。
頭の中で数える。
一人(私)。
それで終わる。
「……三人も必要なんですか」
「一人じゃ部活とは言えないですからね」
そうかもしれない。でも三人って。
そんなに集められる気がしない。
職員室を出てドアを閉めた。
廊下はさっきより静かになっている。
外はもうほとんど夜だった。
三人か。思っていたより遠い。
部活を作るってそんなに難しいんだ。
私は廊下を歩きながら少しだけ考える。
あと二人。どうやって集めよう。
まだ何も決まっていない部。
現在、部員数1人。
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