放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

私達はその場に立ったまま
しばらく動かなかった。
最初に口を開いたのは可動域広子だった。
「……今の、何?」
山田はまだチュパカブラが
消えた路地を見ている。
「本物……だったんですね……」
そのとき、さっきまで尻もちをついていた男がゆっくり立ち上がった。まだ少しふらついている。
男は私を見ると、深く頭を下げた。
「助かった。あのままだったらどうなってたかわからなかった。本当にありがとう。」
「いえ」
私はそれだけ答えた。
男は少し間を置いてから言う。
「お名前、聞いてもいいかな?」
私は少しだけ考えた。
そして首を横に振る。
「大丈夫です」
それ以上は何も言わず
私たちはその場を離れた。
男はまだこちらを見ていた。
この男がのちに中洲を牛耳ることになる人物。ボスタクであることを、このときの私はまだ知らなかった。
次の日は土曜日だった。
学校は休み。だから時間は十分にある。
私は自室でチュパカブラの条件を思い出していた。
ルックス重視。細身。
暗めの髪色。
毛先を内巻きに巻いたミディアムヘア。
襟が紺の白のセーラー服。
紺色のミニスカート。
赤いスカーフ。
黒い猫耳。
黒の下着。Tバック。
私は机の上に並べた服を見る。
そして静かに言った。
「この人を連れていけば大丈夫」
私は机の上にメガネを置いた。
昨日の帰り際、さえ様は言った。
「明日2人は来なくて大丈夫です」
それでも俺は来てしまった。
中洲はもう完全に夜だった。
ネオンが通りを照らしていて、昼間とはまるで違う街みたいに見える。南新地の入り口に立つ楽園ビルも、オレンジと灰色の壁が光に照らされてはっきり浮かび上がっていた。
俺はローソンの影からその様子を眺めていた。
その時、頬に冷たいものが当たる。
「ひっ」
思わず声が出た。
振り向くと、可動域がローソンで買ったドクターペッパーの缶を持っていた。後ろから手を伸ばして、俺の頬に当てただけだったらしい。
「びびりすぎでしょ」
「……なんだ、可動域もやっぱり来たのか」
可動域は肩をすくめる。
「当たり前じゃん。
三人でムー研究会なのに、変でしょ」
俺は少しだけ嬉しくなった。
二人でローソンの影から楽園ビルの前を見ていると、通りの奥から影が現れた。
チュパカブラだった。
楽園ビルの前まで来て立ち止まる。
可動域が小さく言う。
「ちゃんと来るんだ」
それからほどなくして、キャナルシティ側の通りから一人の女子高生が歩いてくるのが見えた。
ネオンの光の向こうから
ゆっくりこちらへ近づいてくる。
暗めの髪色。毛先が内巻きになったさらさらのミディアムヘア。歩くたびに、その髪がわずかに揺れる。
白いセーラー服。襟は紺。胸元には赤いスカーフ。紺色のミニスカート。そして、黒い猫耳。
チュパカブラが昨日提示した条件
そのものの女子高校生だった。
俺は小さく呟いた。
「…来た、けど……誰だ?」
女子高生は周りを気にする様子もなく
そのまま楽園ビルの前へ歩いていく。
チュパカブラの前で足を止めた。
ちょうど街灯の真下だった。
その光の中でようやく顔が見えた。
俺はその顔を見た瞬間
胸の奥が一瞬止まったような気がした。
メガネもない。
マスクもない。
榊ノ下さえだった。
俺は声を失う。
「……さえ様」
隣の可動域が小さく言う。
「え……誰?」
俺はまだ目を離せない。
「榊ノ下さえ様だ」
「は?」
楽園ビルの前。
さえ様はチュパカブラをまっすぐ見ていた。
いつもと同じ静かな表情。
それから一歩前に出る。
夜のネオン街の中で
さえ様の声だけがやけにはっきり聞こえた。
「条件を満たしました」
そして少しだけ顔を上げた。
「さあ、キスをしましょう」
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