放課後クラブ(ハレ系)トクヨク
榊ノ下さえ
25歳 T165 B85(E) W58 H90
験
談

私は、昨日チュパカブラが
提示してきた条件をすべて満たしてきた。
暗めの髪色。
毛先を内巻きにしたミディアムヘア。
襟が紺の白いセーラー服。
紺色のミニスカート。赤いスカーフ。
黒い猫耳。もちろん黒のTバックも。
街灯の下で私はチュパカブラの前に立つ。
チュパカブラはしばらく黙ってこちらを見つめていた。
やがて赤い目がわずかに揺れる。
「その声は……き、昨日の……
???めが……ね……の女……?」
「そうです」
私は短く答えた。
夜のネオンの中、楽園ビルの前で猫耳の女子高生とチュパカブラが向かい合っている。少し不思議な光景だった。
私はまた繰り返して言う。
「さあ、キスをしましょう」
チュパカブラはまだ状況が理解できていないようだった。
「いや、お前……雰囲気ってもんがあるだろ。そんな、いきなり――」
私はチュパカブラの顎を私は指で持ち上げた。ぐっと顔が近づく。そして声が低く落ちた。
「……ほんと」
私は見透かしたように
目を少しだけ細める。
「うるせえ口だな」
次の瞬間。
言葉を断ち切るように唇が重なった。
強引で迷いのないキスだった。
風が吹いてスカートが少しだけ捲れると、ぷるんとしたお尻が少しだけ顔を出す。それと同時に路地に転がる空き缶が鳴る。
私は一歩下がる。
チュパカブラだけが動かなかった。
チュパカブラの緑色の顔がみるみる色を変えていく。夜の中でもわかるくらいどんどん赤くなっていく頬。
緑なのにちゃんと赤くなるのが不思議だった。
私は少しだけ笑う。
夜に溶ける声。
「もう血を吸うのはやめなさい」
チュパカブラは放心状態のまま
しばらく黙っていたがやがて小さく頷いた。
「……はい、さえ様」
こうなることは、なんとなくわかっていた。
何故か大体みんなこうなってしまう。
するとチュパカブラが遠慮がちに口を開いた。
「で、でも……最後にお願いがあります」
「欲張りな子ですね」
「本当に今後一切ここには近寄りません。だから……何か思い出の品がほしいです。僕とさえ様がひとつになったという証が……」
「うーん」
少しだけ言い方が気持ち悪かったが特にツッコむ必要もないだろう。私はスカートのポケットに手を入れる。
すると指先に何かが触れた。取り出してみると、いつもかけているぐるぐるメガネだった。
これしかなかったので
私はそれをチュパカブラに差し出す。
「これをどうぞ」
チュパカブラの目が輝く。
「いいんですか……!?」
「はい」
チュパカブラはそのメガネを
両手で受け取ると何度も頭を下げた。
「ありがとうございます、さえ様……!」
そう言うとチュパカブラは中洲のネオンの向こうへとウキウキで走っていく。おそらく久山へ帰るのだろう。
私はその背中を見送り小さく息を吐いた。
一仕事終えた。
そう思った、そのときだった。
遠くから誰かが走ってくる音がする。
「榊ノ下さん!」
可動域広子だった。
私は驚く。
「え、可動域さん」
少し焦る。私は急いでポケットからもう一つのメガネを取り出してかける。それからマスクを探して、慌ててポケットを探る。
「あれ、マスク……」
「いやもういいって」
可動域広子が笑いながら言う。
「見た目とかどうでもいいじゃん。
とにかくすごいよ。榊ノ下さん」
そして続けて少しだけ照れたように言う。
「いや、さえちゃん。ただの変なやつだと思ってたけど、見直した」
私は少しだけ間を置いた。
それから答える。
「ありがとうございます」
胸の奥が少しだけ温かくなる。
そして少し遅れてまた後ろから足音が聞こえてきた。振り向くと、山田がゆっくり歩いてきていた。
「……さすがさえ様です」
なんだか少し元気がなかったが
私は特に気にすることもなく頷く。
「山田君も来てたんですね」
中洲のネオンは
相変わらず街を照らしていた。
ムー研究会の三度目の正直。
楽園ビルのUMAはこうして静かに去っていった。
次回、最終回。
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